トゥーしゅうかんぼん 多留保



ほんの少し前の時代
東京でもこんなに
たくさんの星が
見えていたのだ

上京した
昭和63年の夜空は
いつも明るい靄がかかっていた

星空を見上げなくなってから
幾年かが過ぎたいま
輪違いの月がのぼる



稲垣足穂 <ちくま日本文学全集>」
著者:稲垣足穂
発行所:株式会社筑摩書房



素通りする活字を追いながら
煙にまかれてしまうよな文体
ですが、
麒麟に乗ると
細胞にしみわたる